平竹クリニック

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無痛分娩medical-information-epidural-birth

無痛分娩について

更新日 2023/9/1

平竹クリニックでは、2003年より現院長が無痛分娩をはじめ、延べ3,000件以上
帝王切開時の硬膜外麻酔を含めると7,000件以上の経験実績がございます。
過去5年分の実績は以下の通りです。

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
分娩件数 712件 702件 706件 748件 740件
無痛分娩件数 212件(30%) 262件(37%) 241件(34%) 317件(42%) 347件(47%)
非無痛経膣分娩件数 392件(55%) 364件(52%) 366件(52%) 327件(44%) 265件(36%)
帝王切開分娩件数 108件(15%) 76件(11%) 99件(14%) 104件(14%) 128件(17%)

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無痛分娩ってなんですか?

分娩経過中に、硬膜外麻酔を行い陣痛の痛みを2~3割に抑えながら分娩を行うことをいいます。

腰のあたりから細い管を入れ麻酔をする方法です。痛みを鎮める効果は強いが、ゆっくり作用するのでママに与える影響は少なく、おなかの中にいる赤ちゃんへの影響もほとんどないと言われています。無痛分娩を行うことによって、できる限りリラックスしてお産ができるように陣痛の感じ方などを確認しながら麻酔を使用していきます。お産の疲労が少なく、回復が早いことや分娩のトラウマ(心的外傷)やストレスの軽減も期待できます。

無痛分娩Q&A

硬膜外鎮痛

無痛分娩のメリット

  • 陣痛の痛みの軽減
  • リラックスすることにより体力消耗を減少させる
  • ゆっくり赤ちゃんの頭を出すことができるため、会陰の伸びが良くなる。そのため、会陰切開率が減少し、会陰裂傷が軽度もしくは無くなりやすい
  • 産後の処置の痛みがない(会陰切開・裂傷部分の処置、胎盤娩出困難な際の胎盤用手剥離、出血多量時の処置等)
  • 緊急時の帝王切開へすぐに切り替えが可能である
  • 妊娠高血圧症候群やパニック障害を軽減しうる

無痛分娩のデメリットやリスク

  • 分娩遷延:麻酔の影響により分娩の進行が停滞することがあります。そのため、陣痛誘発剤(促進剤)の使用や分娩2期の吸引分娩などが増える傾向にあります。非硬膜外麻酔と硬膜外麻酔下の分娩を比較した研究では、経腟分娩の途中から帝王切開に移行する頻度の差には変化がありませんでした(※1)。なお、両者の間に新生児仮死(赤ちゃんがぐったりとした状態で生まれること)の発生に差はなかったとの研究報告もあります(※2)。
  • 血圧低下:麻酔の影響により血圧が低下することがあります。血圧低下に伴い吐気や気分不快を感じられる方もいます。また子宮への血流量が減少し、一時的に胎児心拍が低下する事もあります。点滴を増やす、血圧を上げる薬を使用するなどの処置を行います。
  • 発熱:38℃以上の発熱を起こすことがあります(10%)。産婦さんに痛みがないため、発汗をしないことが原因です。分娩経過や赤ちゃんへの影響はありません。感染などによる炎症が原因ではないかどうか血液検査を行います。
  • かゆみ:麻酔の影響でかゆみを感じる可能性があります(50%)。我慢できないほど強い場合は冷やしたタオルを当てると和らぎます。
  • 排尿障害:麻酔の影響で尿をしたい感じが弱くなりますので、麻酔使用後は尿管カテーテル使用し、適宜導尿していきます。麻酔が効いているため、カテーテル挿入の際の痛みはありません。分娩後、麻酔使用を終了します。その後はスタッフ付添いにてトイレ歩行します。
  • 足の感覚が鈍くなる、力が入りにくくなる:硬膜外麻酔の影響で起こる副作用ですが、麻酔効果が消失すると徐々に回復します。
  • 背部痛:硬膜外麻酔のカテーテルが留置されている部分や留置されていた部分の痛みや違和感を感じることがあります。留置されていた部分の痛みが強くなった場合は診察の必要があります。
  • 胎児心拍の低下:血圧低下などの影響で麻酔薬使用直後に赤ちゃんの心拍数が低下することがあります。お母さんの体勢を変えたり、お母さんに酸素を行うなど状況に合わせて対応することで赤ちゃんに影響することは、ほとんどありませんが、胎児心拍数が回復しない場合には緊急帝王切開を行うことがあります。

※1天野完:我が国における無痛分娩の変遷、産科と婦人科 2015;5:479-483
原澄子:ローリスク症例に対する無痛分娩、周産期医学 2015;12:1719-1723
※2長谷川潤一:硬膜外無痛分娩と分娩予後、産科と婦人科 2015;5:497-500
原澄子:ローリスク症例に対する無痛分娩、周産期医学 2015;12:1719-1723

無痛分娩は誰でも受けられるのですか?

希望による無痛分娩にも対応

家族(夫)の同意が得られていない場合は行うことができません。
他にも、抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の方や血液の固まりやすさに異常がある方、背骨の変形などある方など行えない場合があります。詳しくは無痛分娩同意書をご確認いただき、無痛分娩教室や診療の際にお尋ねください。
医学的適応(妊娠高血圧症候群など)がある場合は当施設より無痛分娩をおすすめする場合もあります。

無痛分娩は24時間対応してもらえますか?

原則として計画分娩(入院日を決めて分娩を行う)

自然陣痛や破水入院後にも対応できる場合もありますが、対応できない場合や麻酔が間に合わない場合もあるため、無痛分娩を希望される場合は計画分娩をご検討ください。
詳しくは無痛分娩同意書をご確認ください。

無痛分娩同意書と無痛分娩教室について教えてください。

硬膜外麻酔で行います

詳しくは、当院で配布している無痛分娩同意書をご覧ください

無痛分娩教室を開催

予約制(当院にて分娩を行う方対象)
毎月第4土曜日(祝日の場合などは変更あり)に無痛分娩について助産師による説明を行っています。
当院にて無痛分娩を行った事のない患者さまは教室の予約後、妊娠28週~35週に参加してください(家族の同席1人のみ可、お子さまの同席はできません)。

当院で配布している同意書を36週の妊婦健診には提出してください。
同意書の提出がない場合は無痛分娩を行うことができません。

教室予約は来院時に受付や外来スタッフへお声掛けください。
無痛分娩に興味のある方もお気軽にご参加ください。

分娩は誰に担当してもらえますか?

分娩は常勤医師1名、非常勤医師5名のいずれかの医師が担当します。
無痛分娩麻酔管理者は、平竹貫二院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医)です。
麻酔科研修及び麻酔実施歴、講習会受講歴についてはこちらをご覧ください。

分娩経過は無痛分娩に関わる研修を受けている助産師が担当します。
研修状況は当院で定期的に無痛分娩に関する勉強会や症例検討会を実施しています。
他、院外開催の研修等への参加も行っています。(詳しくはこちら

【無痛分娩】についてさらに詳しく確認したい方はこちらをご覧ください

まれに起こる合併症

  • 頭痛:処置の際に硬膜外麻酔針が硬膜を貫通してしまうと硬膜外腔に髄液が流出する状態となり頭痛を起こす可能性があります(約100万人に1人程度)。約3~10日で自然に完治します。
  • お尻や太ももの電気が走るような感覚:硬膜外カテーテルが入る時などに脊髄近くの神経にカテーテルが触れることがあるためみられる症状です。一時的な症状であれば問題ありませんが、症状が続く場合には硬膜外カテーテルの位置を調整するなどの処置を行います。
  • 硬膜外血腫:硬膜外腔に血のかたまりや膿がたまることがあります。10~15万例に1例と非常に稀です。血のかたまりや膿が溜まって神経を圧迫することがあります。永久的な神経障害を残すことがあるためできるだけ早く手術をして血液のかたまりや膿を取り除く必要があります。事前の血液検査で血液凝固機能に異常のあるかた、血液が固まりにくい体質で出血傾向のある方かたや、麻酔をする部位や全身に炎症があるかたなどは血のかたまりや膿ができやすいので無痛分娩を行うことができません。
  • カテーテル抜去困難:硬膜外カテーテル抜去が困難なためカテーテルが留置した状態となることがあります。小手術で速やかに抜去します。
  • 血管内迷入による局所麻酔薬中毒:妊娠中の血管は通常より膨らんでいるため、硬膜外カテーテルが血管の中に入る恐れがあります(2%)。その状態で麻酔薬が血管内に多量に入ると耳鳴りや、舌のしびれ、金属味などの初期症状が見られます。さらに血液中の濃度が高くなると、けいれんを起こし、心臓が止まるような不整脈が出ることがあります。発生した場合は、投薬治療を行います。
  • 全脊髄くも膜下麻酔(くも膜下腔迷入):目的の硬膜外腔へカテーテルを入れる際や分娩経過中に、硬膜外カテーテルが脊髄くも膜下腔まで入ることが稀にあります。硬膜外腔に入れるはずの薬液がくも膜下腔に入ってしまうと麻酔の効果が急激かつ強度に現れ、血圧低下や、重症では呼吸不全となることもあります。その場合は、投薬治療、酸素投与や気管内挿管などの呼吸管理治療を直ちに行います。

血管内迷入、くも膜下腔迷入に対する対処方法

  • 硬膜内および血管内への薬液投与を防ぐために、麻酔薬を注入する度に硬膜外カテーテルから髄液や血液などの逆流がないことを確かめてから麻酔薬を投与します(吸引テスト)。
  • 麻酔薬の注入を3mlまでに制限することにより、くも膜下腔や血管内に誤注入してしまっても軽い症状でとどめることができます。そのため、1回量の8-10mlを1度に注入するのではなく1回量を分割して注入することで重篤な症状に移行しないように注意しています。(少量分割投与)。
  • 酸素モニターや血圧測定などのバイタルサインチェックを頻回に行い、スタッフが常に声をかけていきます。

万が一急激な血圧低下や呼吸不全、意識消失などの副作用が発生した場合に、直ちに対応できるよう普段より医師をはじめスタッフも日々の研修と訓練を行っており早急に対応できるよう準備をしています。

硬膜外鎮痛法を受けなくてもお産の後に起こる可能性がある合併症

  • 産後の神経障害:お産の後の神経障害は、赤ちゃんの頭とお母さんの骨盤の間で神経が圧迫されることや、お産の時の体勢が原因で起こることが多いといわれています。
  • 腰痛:妊娠して大きくなった子宮の重みがかかることで、背骨にかかる負担が大きくなり起こります。
  • 排尿障害:分娩に伴って一時的に排尿障害が起こることがありますが、症状が退院時まで持続することは非常に稀です。
緊急対応薬剤や機器、対応について教えてください。
  • 無痛分娩に関する施設・医療機器の配備状況について
    麻酔器:手術エリアに配備(分娩エリアと隣接)
    除細動器またはAED:手術エリアおよび外来に配備
    母体用生体モニター:分娩手術エリアに配備
    無痛分娩患者:硬膜外麻酔処置時と麻酔薬使用開始から帰室まで使用
    非無痛分娩患者:分娩2期(分娩体位をとる頃)から帰室まで使用
  • 蘇生用設備・機器 、緊急対応用薬剤について:分娩手術エリアに配備(詳しくはこちら
  • 急変時の対応について
    重症母体および新生児の搬送は搬送先に連絡後、119にて救急車要請し救急搬送しています。母体搬送時はスタッフが同乗し、新生児搬送時は搬送先の医師が同乗します。
    母体・新生児搬送先医療機関名
    名古屋市立大学医学部附属西部医療センター、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院、他
  • 蘇生法講習会参加状況 2021年12月現在
    日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)ベーシックコース修了 医師1名 助産師11名 看護師5名 周生期医療支援機構ALSOプロバイダーコース修了 助産師2名
    新生児蘇生法(NCPR)普及事業 新生児蘇生法「専門」コース 医師2名 助産師13名 看護師5名
  • 危機対応シミュレーションの実績と内容
    実施日 テーマ 参加者 訓練の様子
    2018年8月 子宮収縮不全・
    出血性ショック
    参加者10名(助産師・看護師)
    訓練の様子1
    2019年11月 名古屋市救命入門コース 参加者20名(助産師・看護師・事務員)
    訓練の様子2
    2020年 JCMLCより母体救急時の対応について 参加者15名 コロナ禍にてペーパー学習

無痛分娩資料

無痛分娩実施歴 平竹クリニック:2003年9月~2022年12月現在1,500例以上
麻酔科研修歴 1996年、1997年愛知医科大学麻酔科にて、全身麻酔及び硬膜外麻酔などについて研修実施。
麻酔実施歴 愛知医科大学付属病院
蒲郡市民病院
国立名古屋病院
平竹クリニック
全身麻酔実施症例数:平成9年~令和3年現在 2450件・硬膜外麻酔実施症例数:平成9年~令和3年現在 4000件
安全な産科麻酔の実施と安全管理に関する最新の知識の修得及び技術の向上のための講習会 外部麻酔科医による院内講習
  • 2018年9月:無痛分娩実践編
産科麻酔に関連した病態への対応のための講習会 外部麻酔科医による院内講習
  • 2017年4月:産科麻酔の基礎・無痛分娩・CS・D&C時の麻酔について
  • 2018年7月:無痛分娩概論
  • 2018年8月:産科麻酔の基礎
救急蘇生コース
  • 2018年:日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)ベーシックコース修了
安全な産科麻酔実施のための最新の知識を修得し、ケアの向上をはかるための講習会 外部麻酔科医による院内講習
  • 2017年4月:産科麻酔の基礎・無痛分娩・CS・D&C時の麻酔について
  • 2018年7月:無痛分娩概論
  • 2018年8月:産科麻酔の基礎
外部麻酔科医による症例検討会
  • 2018年11・12月
  • 2019年1・2・3・4・5・8・11月
  • 2020年2・8月

蘇生用設備・機器

酸素配管・酸素流量計・マスク・経鼻エアウエイは分娩エリア、手術エリアともに配備
バックバルブマスク・喉頭鏡・気管チューブ(6.0Fr6.5Fr7.0Fr)・スタイレット・経口エアウエイ・吸引装置・吸引カテーテルは手術エリアに配備

緊急対応用薬剤

アドレナリン・硫酸アトロピン・エフェドリン・フェニレフリン・静脈用キシロカイン・ジアゼパム・スキサメトニウム・硫酸マグネシウム・静注用脂肪乳剤・乳酸加リンゲル液・生理食塩水は配備
全身麻酔薬としてケタラール・イソゾールを配備
筋弛緩(しかん)薬の拮抗(きっこう)薬としてワゴスチグミンを配備

   
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